・演技について→3、声→練習法・早口言葉は言えればいい?

具体的な声の練習法について書いていきます。
私は、声を出す最も基本的な稽古は早口言葉だと考えています。

台詞は複雑な感情を表現することも多いのでもっとレベルの高いものですし、かといって何の指標もないまま喋っていても稽古にはなりません。
何でもいいから読める言葉があって、かつ言葉の意味とは関係なく自由な表現ができる。

そういう意味で、早口言葉こそが最も手軽な声の稽古だと思うのです。


例えば、

青い家をおいおい売る、上へ青い葵をおいおい植える

という早口言葉があります。平仮名にすると

あおいいえをおいおいうる、うえへあおいあおいをおいおいうえる

となります。


これは私が芝居を始めたころからずっとアップで言い続けてきた早口言葉です(今回ネットで調べてみたら早口言葉ナビなるものがあり、そこに載っていたのはもっと長いバージョンでした)。

この言葉、意味は解らなくてもいいです。意味はさほど重要ではありません。


とりあえず、声に出して読んでみて下さい。
最初は言えるか言えないか、というのがポイントになります。


スムーズに言えるようになったら、今度は、五要素を意識して言ってみて下さい。
強弱、緩急(間)、高低、音色、ベクトルの五つです。

まず強弱。「」の中を強く、他を弱く読むようにしてみて下さい。

「あ」おいいえを「お」いおいうる、うえへ「あ」おい「あ」おいをおいおい「う」える。


次に緩急。「」の中をゆっくり、他を素早く読むようにして下さい。

「あーおー」いいえを「おーいーおー」いうえる、うえへあおい「あーおー」いをおいおい「うーえ」る。


次は高低です。「」の中を高く、他を低く読むようにして下さい。

「あおいいえを」おいおいうる、うえへ「あおいあおいを」おいおいうえる。


音色です。「」の中をかすれた声で、他を普通の声で読むようにして下さい。

「あおいいえを」おいおいうる、うえへ「あおいあおいを」おいおいうえる。


ベクトルは違う項で詳しく解説するので、とりあえず飛ばします。
どうでしょう? うまくできたでしょうか。





ここでの目的は、感情を表現することではありません。
単純に、技術を身につけることです。

だからまず、五要素の変化に声を(身体を)慣らすのが重要です。
下地ができていなければ、どんなにイメージでは「高い声から瞬時に低い声に変える」と思っていてもできません。

それぞれの変化に慣れてきたら、高低と強弱、緩急と音色などを織り交ぜてやってみましょう。
スムーズに、自然に五要素を織り交ぜながら使えるようになったら、今度はそれを意味のある台詞でもできるように訓練します。


ちなみに応用として、早口言葉に喜怒哀楽の感情を乗せて読む、というのもあります。
とても嬉しいことがあったんだよ、と友人に話すときのように

あおいいえをおいおいうる、うえへあおいあおいをおいおいうる!

と喋ってみましょう。または親の敵に怒りを叩き付けるときのように

あおいいえをおいおいうるうえへあおいおいをおいおい、うる!!

と喋ってみましょう。なまじ言葉に意味を持たないが故に、早口言葉には無限の感情を乗せることができます。
初心者だけでなく、演技に行き詰まりつつあるような役者にも、早口言葉での稽古は有効です。