・演技について→3、声→声を変える−発声の五要素−。

具体的に声の演技の解説に入ります。

声の演技が上手いとはどういうことでしょう。
少し考えてみて下さい。一分ほど。


はい、一分経過。自分なりの答えは見つかりましたか?(多分大半の人は一分も待たずに読み進めるでしょうけど)
早速ですが答えを言います。

正解は「自分の思いどおりに声を操れる」ということです。


どういう声がいい声か、ということについては正解がありません。
高い声より低い声がいいとか、暗い声より元気な声がいいとかいうことはありません。場合によります。

場合によるから、声の演技が上手い、とは望むように声を操れることを指すのです。




では、声を操るとはどういうことでしょう。
操るというからには何かを変化させるのですが、では声の何を変化させられますか。
また一分考えてみて下さい。


はい、一分経過。自分なりの答えは見つかりましたか?(笑)
人によって答えは違うでしょうが、私は五つ、変化できるものがあると考えています。


・強弱
・緩急
・高低
・音色
・ベクトル


です。
まず強弱ですが、「好き」という言葉を強く言ってみて下さい。
なんだか凄く好きなんだなあという意志が込められるはずです。逆に弱く言うと、自信なさげになったりします。
強弱によって、乗せやすい感情が変化します。


次に緩急。スピードです。
「好き」と素早く言って下さい。恥ずかしくてさりげなく言ってみた、という感じになるかもしれません。
それから「好き」とゆっくり言って下さい。すぅーきぃー、と発すればなんだかふざけた感じになるでしょう。
ちなみにここにスピードゼロとして「間」の要素も含みます。「あなたが好き」と言うときに「あなたが」「好き」と言ったり「あなた」「が」「好き」と言ったり「あなたが好」「き」と言ったりしてみて下さい。乗せられる感情が変わります。


高低も変えてみて下さい。
高すぎる声だとうわずって聞こえますし低い声だとマジっぽくなります。


音色は、例えばしわがれた声などです。
のどが痛いという設定で「好き」と言ってみましょう。相手は「好き」という言葉の意味よりも「大丈夫?」とのどのことを心配するかもしれません。
一般的に「声を変える」と言ったらこの音色を変えることになります。


ベクトルは、方向のことですが意味としてはこの場合距離も含めます。
目の前の相手に「好き」と言うときと遠くにいる相手に「好き」と言うときは確実に言い方が変わるはずです。
一般的に「変える」と言ったら前の四つですが、実は一番大事なのがこのベクトルです。


この五つですが、もちろん実際は強弱と緩急と高低を組み合わせたりして使います。
強く速く、低い声で「好き」と言って下さい。怒ったようにさりげなく叩き付ける感情が乗せやすいはずです。


こんな感じで、自分の役の台詞をこの五要素を変えて言ってみて下さい。
それが声の演技の全てです、と書くと簡単ですが実際無限のパターンがあります。

演技に慣れればなかなか丁寧に一つ一つの台詞に対して五要素を考えることがなくなってきます。
パターンに行き詰まったときや更なる飛躍を目指したいときに五要素を考えてみて下さい。