・演技について→2、演技の四要素→演技を構成する四つの要素。

さてここからしばらくは、技術の話になります。

重ねて言いますが、技術は必要になってから身につけることをおすすめします。
技術から身につけてもいいことはありません。そういう前提で始めたいと思います。




演技とは何か、ということを1の最初に書きました。
そのときは「自分にある一部をクローズアップしてキャラクター化すること」と書きましたが、それは概念的な回答です。

違う視点で……技術面を形式的に考えたとき、演技とはなんなのか。
答えは「四つの要素」になります。


舞台の上で、演技によって役者が客に何を見せるか。
それを考えたときに出たのが声、身体、表情、心の四つです。

これらを磨くことが結果的に演技を磨くことになります。
ので、私にとって演技とは、この四つの要素で構成されているものです。




「演劇は音声のメディアだ」というようなことを第三舞台の鴻上尚史さんがどこかで書いていましたが、私もそう思います。
役者の声の演技がへぼいと、他の要素がどんなに上手くとも見ていられません。逆に声の演技がしっかりしていれば、他が酷くてもなんとか見られます。
そういう意味で声はとても重要です。


もちろん、ラジオドラマではありませんから声以外の要素も重要です。
舞台演技ほど身体を使う演技もありません。逆に言えば、舞台演技くらい動く演技を映像などでやったらギャグになります。
ただだからこそ、舞台演技は身体で語れることがたくさんあるのです。身体も重要です。


そして舞台が何故映像にすると別物になるのか、という答えの一つが表情にあると思っています。
身体の一部である顔を敢えて切り離したのは、顔だけで表現できるものがあまりに多いからです。
表情があんまり見えなくなる映像は致命的です。もちろんそれだけではありませんが、表情でこんなに多くのことを表すメディアは他にあるんだろうかと思います。


最後は心です。
これだけある意味イレギュラーですが、立派な要素です。むしろイレギュラーながら他の三つと切り離して考えると文字通り心のない演技になってしまうので一つの要素として考えます。


以上四つが演技を構成するものです。
ここから一つ一つを見ていって、自分が今必要としている技術はどれなのか、ということを考えていただければ幸いです。