・演技について→1、演技について・はじめに→自分にないものは演じられない。

演技とは嘘をつくことではなく、自分の一部をクローズアップすることだと書きました。
だから当然、自分にないものは演じられません。この点、少し補足的に書いておきます。

例えばあなたが男で、おかまの役を演じるとします。
あなたにおかまの知り合いはおらず、自身もおかまではありません。

この場合、どうすればいいでしょう。
自分にないものは演じられないので、おかまの役はできないでしょうか?


結論から言うと、できます。
考えられる方法は二つあります。

一つは、自分の中のおかまのイメージだけで演じること。
これは、厳密に言うと演技ではありません。最初の項目で言えば「嘘をつくこと」です。

このやり方だと「そのイメージなりのおかま」にしかなりません。
オリジナリティ等は皆無ということです。余程イメージ力に長けた人なら話は別かもしれませんが。


もう一つのやり方は、おかまになることです。
おかまの知り合いを作ることが難しいなら、自分がおかまになってみるのです。なりたいと願うのです。

具体的に何をするかと言うと、身近な女性で「こうなりたい」という目標を見つけます。
そして徹底的に観察します。こんな女性になりたい、と願います。

それができたとき、あなたはもう既におかまへの道を進んでいます。
「おかまになろうという嘘」ではなく「自分の中のおかまの可能性」を追求しているのですから。

自分にないものは演じられません。
ただ、男であれば確実におかまになれる可能性を持っていると思います。どんな人でも、そういった資質が隠されていると思うのです。
その資質を探り、気付き「ああ、おかまってこういう気持ちなんだ」と自分なりに理解したらそれを演技に落とし込みます。
ちなみに私、以前この方法で実際におかまを演じたことがあります。周囲には「気持ち悪い!」と蔑まれるのではなく「……怖い」と真剣な顔で言われました(男に)。くねくねして気持ち悪い、と言われているうちはまだ「おかまの真似をする男」です。

と、いうわけで上記の方法を使えばイメージだけのおかまよりずっとオリジナリティとリアリティのあるおかまになるはずです。
ここでのポイントは、おかまを観察するのではなく女性を観察する、ということです。おかまになりたい、という人はいないと思うからです。女性になりたい男、それがおかま……ですよね?(自信なし)




と、別におかま演技講座ではありませんでした。すいません。
とにかく自分にないものを無理に演じようとはしないことです。

現段階で自分にない、と思ってしまうものならなんとかしてその役に似たものを自分の中から探り出し、見つけて下さい。
演技の楽しさとはそこであり、自分にないと思ったまま無理に演じるところから、演技は苦痛になっていくのですから。