・芝居全体について→1、芝居を始めるにあたって→役職にはどんなものがあるか。

主にスタッフについて書きますが、敢えて「役職」と書いたのはまず集団内の役割という観点から考えていただきたいからです。

具体的に私がやっていた劇団について書きますが、公演態勢中は以下のように役職を割り振っていました。


・演出
・舞台監督
・舞台美術
・小道具
・照明
・音響
・衣装/メイク
・制作
・役者


基本的にはこの九つが「役職」となります。
「スタッフ」という意味ではこれから演出と役者を除いた七つですが、個人的に役者たちとスタッフたちを切り離して考えたくないので同列に置きます。

さて、それでは一つ一つ役職の仕事内容を簡潔に書いていきます。


・演出
映画で言えば監督の役割です。
戯曲を解釈して役者にどういう演技をさせるかを考え、指導します。役者の演技という音色をまとめ上げ、舞台作品という一つの音楽にする仕事とも言えます。オーケストラで言えば指揮者です。私がやっていた劇団ではスタッフの方向性についても考え、スタッフと直接話し合いました。
当然、演技の知識が求められますしそれ以外にも芝居の方向性を考えられる人でないとつとまりません。
そういう性質だからか、高校生の演劇部などではこの役職をなくし、演出は部員全員でやる、というところも多いようです。最初はそれでいいですが、芝居を深化させるためにはなくてはならない役職です。


・舞台監督
「ブカン」という呼び名で親しまれ(?)ます。
映画で言えば監督補、テレビのADということになるのでしょうか。要は雑用で、会社で言えば総務のようなものだと思います。
具体的な仕事はスタッフのスケジュール管理(統括役です)、稽古場所・公演場所の確保、役者の精神ケア(相談を聞く)、金銭の管理などです。「これは誰の仕事だ?」というのはほとんどブカンの仕事で、劇団内を取り仕切るところから演出の女房役とも言われます。家庭で言えば演出が一家の主の父ちゃんで、ブカンはそれを支えつつも財布の紐を握る、影の権力者母ちゃんです。
まとめ役ってのはなんでもそうですが、一番辛い仕事と言えます。役者の精神ケアも仕事ですが、こいつ自身をケアしてやらないとやばいな、という状態になるブカンを今まで何人も見てきました。


・舞台美術
大道具、装置、などの呼び方もされるスタッフです。
舞台に置く大道具や動かさない小物を用意します。小劇場の場合袖を作るためにパネルを立てたりもします。
建築家と大工、両方の側面を併せ持つので、頭も身体もちゃんと使える人でないと結構きついです。
舞台監督に美術を作らせる劇団もあるそうですが、そういう話を聞くと「げげっ」と思います。大丈夫なんでしょうかそのブカン。


・小道具
大道具との違いは「役者が手に持って使うもの」か否か。
舞台に机があって、役者がちゃぶ台返しをしたら小道具なのかという疑問もありますが、その辺は酷く曖昧な定義です。責任の押し付け合いになりそうだったら大道具と小道具を同じ人に任せるのも手です。
また、芝居によっては小道具を使わずマイムで済ませることもあります。


・照明
舞台を照らす照明のプランを考え、実際に吊り、当日操作もします。
ちゃんとした劇場なら機材は一通り揃ってますが、照明の知識がないとなかなか手を出しにくいスタッフです。基本の使い方が解っていればまだ大丈夫ですが。
これも極論を言えばONとOFFだけで済みます。蛍光灯でもいいなら酷く簡単です。


・音響
舞台に使用するBGMやSEを探し、もしくは作り、当日操作します。
これもちゃんとした劇場なら機材は揃ってます。無難にやるなら照明よりは専門性の要らない仕事です(というのも、大体スピーカなどの音響機材は据え置いてあるからです)。
あと、極端に言えばラジカセだって公演は可能です。


・衣装/メイク
役者の衣装とメイクを考え、用意します。
小さな劇場の場合、メイクをしない劇団さんもあります。髪型とかは作るでしょうけど。
衣装は芝居のために全て買わねばならないわけでもないので、その辺で節約が可能です。

・制作
会社で言えば営業です。販促、広報的な側面も兼ねます。
芝居の宣伝に携わることは全て制作の仕事です。チラシを作るのもDMを送るのもサイトを作るのもどこかに書き込むのも劇場を回って芝居を宣伝するのも制作の仕事です。ハードです。
制作の力一つで芝居の成功が左右されると言っても過言ではありません。が、制作をあまり重要視していない劇団も多いようで、大変な割に感謝されないあたりも営業と同じかもしれません。


大体はこんな感じですが、公演によってはこれに「効果」だの「映像」だのが加わる劇団もあります。
私のやっていた劇団ではそういう場合「効果」というスタッフにまとめて、スモークだの映像だのの「舞台効果」を担当してもらっていました。最近はプロジェクタを使って舞台に映像を投影するのも一つの手法です。

役職は以上のようにたくさんありますが、人によって向いているものが一つはある、と言われています。
やってみたいと思うものがあれば是非挑戦してみて下さい。


人数が少ない劇団では幾つかのスタッフを一人が掛け持ちすることも普通ですし、役者とスタッフを兼任するのもざらです。
もしくは思い切って幾つかのスタッフをなくすのも手ですので、ここに書いたのはあくまで基本だと考えて下さい。